屈曲面での測定において一般的に言えること
膜厚測定において、渦電流式は形状変化に対して極めて敏感です。
鉄の下地材の膜厚測定によく採用されているのは電磁式で、非鉄金属の下地材の膜厚測定によく採用されているのは渦電流式です。
測定対象の皮膜の厚さがプローブの磁界に影響を与える度合いを測定する原理に用いています。
磁界は空間的な拡がりを持っているので、検査サンプルの形状も測定結果に影響します。凸型に屈曲した場合には皮膜は過大に測定されます。逆に凹型の屈曲の場合には膜厚は過少に測定されます。
屈曲部でも正確に測定するためには、同じ曲率の未コーティングの試験品でキャリブレーションしなければなりません。曲率が変われば、改めてキャリブレーションが必要となります。異なる部品が多数ある場合には、キャリブレーション屈曲部でも正確に測定するには、同じ曲率の未塗装の検査サンプルでキャリブレーションしなければなりません。曲率が変われば、また改めてキャリブレーションが必要となります。異なる部品が多数ある場合には、キャリブレーションの手間が大幅にかかる上、未コーティングの検査サンプルを用意しなければなりません。渦電流式(非磁性金属上の絶縁皮膜の測定)は電磁式(磁性金属上の非磁性皮膜の測定)よりもはるかに敏感に影響します。
対策
曲率補償型の渦電流測定プローブFTD3.3を使用すれば、任意の部品形状に施された塗膜やアルマイトの皮膜を1回のキャリブレーションでより正確に測定することができます。この渦電流式の測定プローブFTD3.3は、多くのキャリブレーション作業を必要とせず下地の曲率を補償するので、これを使うことによって、従来のプローブと比べて測定の手間を大幅に減らすことができます。
従来のプローブFTA3.3と曲率補償型プローブFTD3.3の比較測定
図1に示す測定比較のグラフは、従来型の渦電流式プローブFTA3.3と曲率補償型プローブFTD3.3を比較した測定結果を示しています。曲率の異なる真鍮の円筒にキャリブレーションフォイルを測定してシミュレーションしました。両方のプローブのキャリブレーションは、平らな板上で実施しました。
プローブFTA3.3の測定値は典型的な曲率の影響が出ています。曲率が高くなるにつれ、測定上の膜厚は実際の値と比べて増えています。曲率補償型のプローブFTD3.3では、膜厚はほぼ正確に測定されています。プローブFTA3.3で測定する場合には、測定する各種曲率形状の上でキャリブレーションを行わなければなりません。
この測定結果で分かるように、プローブFTD3.3のメリットは明らかです。余計な手間を掛けずに非鉄金属上の絶縁皮膜の膜厚測定を行うことができ、検査サンプルの形状による影響を抑えることができます。
クリア塗装されたアルミブラインドでの実際の測定
例に示す「クリア塗装されたアルミブラインド」では、ユーザーにとっての実務的・時間的メリットは明らかです。検査サンプル用に未塗装のブラインドの薄片が必要ですが入手できず、用意できたのは平らなアルミ板のみでした。このアルミ板でキャリブレーションを行い、クリア塗装の膜厚を凸側と凹側で測定を行いました。プローブFTD3.3については全く問題ありませんでした。
プローブFTA3.3を使用してブラインドの同じ測定を行ったところ、測定結果は明らかに違うものでした(図2)。プローブFTA3.3で正しく測定するには、実際に測定を行うブラインドの未塗装の検査サンプルを用意し、両側でキャリブレーションする必要があります。
結論
同等の条件下(平らなアルミ板でキャリブレーションをしてブラインドの膜厚測定)において、より精度高く測定できたのはプローブFTD3.3でした。なお、プローブFTD3.3は、標準偏差から読み取れるように、測定精度の高さも注目すべき点です。